生物版ロボコン iGEMの魅力とは
はじめまして。私は2018iGEMに参加しようと画策する都内の大学生です。今日はこのiGEMを知ってもらうために少し記事を書こうと思います!
この記事は生物学を勉強している人向けの記事ではなく、文系理系問わず誰もが読んで理解できるようにすることを意識しています。ところどころつたない部分があるとは思いますがご了承ください。この記事を見に来る人のほとんどはiGEMを知っている人だと思います。日本のiGEMチームの活性化を目指しているのでシェアしてくださると嬉しいです。
iGEMとは?
iGEMとは一言で言うと、バイオ版アイディアソンです!
アイディアソンとは、アイディアとマラソンを組み合わせた造語です。短期間で様々な参加者とともに話し合いながら、新製品やサービス、社会問題の解決策などを練り、新しいアイディアを生み出す活動のことを言います。
つまり、iGEMとはバイオの技術を応用して、新しい実用的なアイディアや実験手法を作り出したり、社会問題を解決しようという活動です。具体的な例では、
・オランダの学生たちが養蜂業で近年問題となっているミツバチに寄生するダニを農薬を使わず退治した。
Team:Wageningen UR - 2016.igem.org
・スコットランドの若者の間で流行っているモルヒネ、ダイエットドラッグ、MDMAを粉から検査するキットを超低価格で作った。
Team:Edinburgh - 2015.igem.org
など様々なプロジェクトが学生の手によって世の中に発表されました。
iGEMは、今や世界規模の活動となっています。毎年10月に世界大会が開かれ、各大学が一年間かけて考え抜いたアイディアをプレゼンで競わせます。
iGEMの特徴の一つは、アイディアが面白いだけでは評価されないことです。社会と対話しながらアイディアを洗練させるプロセスや、実際に実験し、検証して実用可能かを調査するところまでが、iGEMでの評価の対象になります。
iGEMで使う技術 遺伝子組み換え
iGEMを語るにあたり、切っても切り離せないものとして、遺伝子組み換えがあります。
遺伝子組み換えと聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?スーパーに行けば、「この製品で使われる大豆は遺伝子組み換え作物ではありません」なんて裏に書いてある食品なんかをよく目にしますよね。危険なもの、環境に悪いもの、人間が行ってはいけないもの... 様々な負のイメージを持っているかと思います。
一方、学術の世界では遺伝子組み換えは、生物を扱ううえで基本の技術です。遺伝子とは、生物が自分を作るうえでの設計図としての機能を持つデータのまとまりのことを言います。このデータを足したり、引いたりと編集をして世の中に役立てようとするのが遺伝子組み換えです。
例えば、糖尿病患者に投与する薬であるインスリン。昔は動物から直接抽出していましたが、今では菌が動物の代わりに作っています。インスリンを作るのに必要な遺伝子を菌に入れ込んでいるということです。菌に作ってもらうことで、インスリンの性能が向上し大量生産が可能になりました。
また、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥先生のiPS細胞。iPS細胞を作る過程でも遺伝子組み換え技術が用いられています。
このように遺伝子組み換えは医療や農業をはじめとして幅広く貢献しています。最近では割れたコンクリートを修復する微生物の実用化が決まりました。iGEMでは2010年にNewcastle大学がコンクリートを修復する微生物を遺伝子組み換えで改良し、大きな注目を浴びました。
Team:Newcastle - 2010.igem.org
遺伝子組み換えを語るうえで欠かせないのが生態系への影響です。遺伝子組み換えで作った環境に強い生物が野に放たれたら一気に広まって生態系に悪影響を及ぼしてしまうのではないかという懸念があります。iGEMではこうした懸念も論点の一つになります。
こうした懸念を解消するために、光を浴びたり、特殊な化学物質がなくなったりしたら、自ら死んでしまうような仕組みを作るようなことを実際に行おうとしています。
外に出たら死んでしまうようにすることで、誤って広まってしまうのを防ごうというわけです。
iGEMの魅力
iGEMには数えきれないほどの魅力がありますがその中で二つを紹介します。
まずiGEMはアイディア次第です!
近代、科学技術が大きく発展したのは事実ですが、その中で本当に実用的に使われている知識はいったいどれくらいあるでしょうか。現代に生きる私たちにはこの問題に答えることはできませんが、たぶん割合、めちゃくちゃ少ないです。これを説明する例として私が好きなのは火薬の発見と大砲の発明です。サピエンス全史という本の下巻にこんな一文があります。
中国の錬金術師が火薬を発明してから、トルコの大砲がコンスタンティノープルの城壁を粉砕するまでには、600年の時が流れた」(p168)
サピエンス全史(下)
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これは基本的な科学現象の発見から、実用的な応用例が現れるまで、時にものすごい年月がかかってしまうことをよく説明しています。私は今の時代にもこのように応用の仕方が思いつかず、放置されてしまう科学がごろごろ転がっていると思います。学問をどうやって応用するか考える機会が存分にあるのがこのiGEMの魅力です!
次に、iGEMはチームです!
短い大学生活の中の一年間という比較的長期的なスパンで、共に協力し合う同年代の仲間がいます。時には喧嘩をしながら、何とか世界大会に間に合わせ、発表したという経験は言葉では語りつくせない思い出になるのではないでしょうか!?私は今年初参加なのでこれは先輩談です。自分も一年かけて検証してみます。
日本のiGEMチーム
2017の大会では世界各国から337チームが集まりました。
この年日本からは、北海道大学、東京大学、東京工業大学、東京理科大学、神奈川工科大学、岐阜大学、長浜バイオ大学、京都大学、神戸大学とアメリカンスクールインジャパンの10チームが参加しました。
2018の日本のiGEMチームの動向はどうなるのでしょうか。iGEMに参加を表明していて、現段階で私が把握しているのが、東京工業大学、東京理科大学、神奈川工科大学、岐阜大学、京都大学の5チームです。減りましたね… どのチームもメンバー集めや資金繰りの厳しさから何とかチームを保っているというのが現状なのかもしれないです。
日本でのiGEMの認知度が上がり、各チームが活動しやすいような雰囲気を作っていけたらいいなと思います。大学生活で何かに一生懸命になってみたいと思う学生諸君、iGEMで研究しよう!
以上とある都内大学生のブログでした。最後まで読んでくださってありがとうございます。